金のバロット

バロットとは、東南アジアを中心に食される孵化寸前のアヒルの卵を茹でたもの。

金のバロット 第2話 「ミルクの中にいる蝿」

俺には分かる ミルクの中にいる蠅

その白と黒はよく分かる。

俺にも分かる 俺には分かる

どんな人か,着ているもので分かる。

それくらい俺にも分かる。

天気が良いか悪いかも分かる。

俺には分かる

林檎の木を見れば、林檎だと分かる。

働き者か怠け者かも分かる

なんだって分かる。

自分のこと以外なら、なんだって分かる。

要するに、なんだって分かる。

健康な顔と青白い顔の区別も分かる。

全ての終わりをもたらす死も分かる。

なんだって分かる。


自分のこと以外なら


(ヒミズより)ヴィヨンの詩


映画『ヒミズ』は、二階堂ふみ演じる制服姿の中学生が、雨でずぶ濡れになりながら本を片手にヴィヨンの詩を読むシーンから始まる。



自分自身のことを本当に理解している人なんかいないと思う。自分ですら他人。僕もそういったことが多い。何でこんなことを書いたのだろう、言ったのだろう、したのだろう。そういった思考のるつぼ。



内定者研修は地獄だったが、それ以前の、それより2週間前の内定式は結構楽しかった。



10/1、新宿のとある会場。


たぶん100人くらいいた同期たち。そこでは6、7人くらいでグループになり丸いテーブルを囲い、内定式、立食パーティー的な催しをした。僕のグループは女子3人、男子4人。

 

僕の言動や立ち振る舞いが何故か女子2人にウケた。ハマった。米津玄師に似ていると言われ、あだ名が米津になっていた。初めてのことだ。

そこでは愛想笑いの出来ない僕だったが、笑いのツボが浅くなっていたのか、聞く話、聞く話にニコニコしていた。本当に笑っていた。その女子からは、「この班はみんな君のこと好きだよとか、同じ仕事先にいたら癒される」とか言われた。



これが承認欲求の闇かと感じた。しかもそれは本当の僕ではない。あざとく天然な面が出ていたのだろう。普段を僕を知ったら嫌うのだろうか。嫌われるのは構わないが、好意的から嫌悪されるのは、なかなかこたえるな。

 


僕は矛盾が多い性格だ。理論的でポエマーでロマンチストで、毒舌的で寛容で差別的で、素直で捻くれていて性格は悪い。



今、漫画制作をしている。その漫画は暗くネガティヴで悲劇的だ。ふと、何で僕はこんな漫画描いているのだろうと思った。


漫画家になるというハッピーエンドを願っているのに、描く漫画はバッドエンドばかり。夢を否定しているくせして夢見ている。



心のどこかでは……。




ただ、



高校二年生の時の、名もない春の日の朝。前日の夜まで降っていた雨が空気中の塵やゴミを洗い流したのだろう。いつもと同じ登下校の道。ただの濡れる路面に、反射する朝日。肌寒い空気。


ただただ美しかった。それだけは理解できた。それ以外の感情はなかった。



僕はただ、あの美しさを誰かに話したいだけなんだ。