金のバロット

バロットとは、東南アジアを中心に食される孵化寸前のアヒルの卵を茹でたもの。

金のバロット 第5話「愚行録」

僕は毎日が憂鬱で仕方ありませんでした。なぜなら、完全に落ちこぼれていたからです。

 

僕は小学生のとき、友達がいっぱいいました。田舎を自転車で駆け巡っていました。輪の中心にいつもいました。でも、そんな友達は中学に上がる節目でいなくなりました。友達はわがままで自分勝手な僕に付き合いきれなくなったのです。

 

同じ部活の同級生の仲間内のなかでも、僕は自分から声をかけなきゃ遊んでもらえなくなりました。遊びの誘いはまず僕には掛からず、僕はいなくてもいい存在となりました。自分の王国が崩壊したのです。

王子はそれに気づいた頃には、友達付き合いがわからなくなりました。友達付き合いを辞めました。そして孤独になったのです。

 

高校受験は成功し、進学校に入学しました。隣町の男子校にバスで通うことになりました。僕は勉強でも躓きました。人見知りになっていました。でも二年生のときは、友達に恵まれ修学旅行は一人になりませんでした。楽しめました。でも三年生になるとクラスが別々になり教室では一人でした。誰とも話せませんでした。高校時代、勉強も運動も趣味も交友も何もしていませんでした。無駄に過ごしました。

 

一人のくせに周りに流されていました。僕は大して上手くもない画力で、漫画学科のある大学に進学しようと決めました。受かったのは受験3度目の三月のときでした。卒業式に出れませんでした。

そしてFラン大学の授業料を払うため膨大な奨学金を借り入れました。高校卒業後は大学に行くのが当たり前だと思っていた僕は大して就職先もない大学に行くことになり、しかも借金を返すため卒業後は働かなければならない状況になりました。

 

これが僕の人生の最初の大きな過ちだったのかもしれません。もしかしたら、高校卒業後働きながら漫画家を目指すのもアリだったかもしれません。浅はかでした。

 

それからも惰性は続きます。

2019年三月。就活解禁されても何もせず、四月に大学四年生にして家に引きこもりました。

何もしたくなかった。でも漫画を描いていたら気分が回復しゴールデンウィーク過ぎの五月に就活を始めました。でも直面した事実はあまりにも重かった。

 

今までのツケが帰ってきました。

 

人付き合いを辞めたことになる人見知り、コミュニケーション能力の欠如。斜に構えた性格。才能のない画力。社会は漫画を描く能力など必要としていなかった。

それまで僕は漫画家を神だと思っていました。そういった首の皮一枚で繋がっていた僕の絶対的なもの、根底的なものがひっくり返されました。否定されました。僕は社会で圧倒的に劣った存在だと知りました。

 

僕は凡人の才能も天才の才能も持ち合わせていなかった。

 

面接はことごとく落ちました。でも八月には受かりました。でもそれは誰にでも出来る仕事です。どうでもいい。

 

 そして現在に至ります。

 

 

なんなんだお前。

 

人生ずっと惰性じゃねえか。

 

 

でも。

 

僕は引き返せません。人は人生の中で一番時間を掛けたものに、人生を委ねます。

 

 

僕の場合、漫画です。それしかありません。

人生の選択を間違っていたけれど、漫画に出会ったことは間違いではなかったはず。

 

僕は漫画少年ではありませんでした。初めて漫画を読んだのは中学三年生のときです。それからも大して読んでいませんでした。

でも性に合っていた。

 

 

僕は小さい頃から絵を描くのが好きでした。でも不思議と絵描きになろうと思ったことありません。それは多分否定されたからだと思います。夢ではなく、絵を描くという行為を。

 

小学一年生の時。授業で給食ポスターというものがありました。それは給食を食べる様子を画用紙にクレヨンで描くというものです。その絵は大会に出されます。

僕は多少絵が上手かったのか、担任に選ばれました。でも担任の教諭がやらせたことは、担任が鉛筆で下書きした絵に僕がクレヨンでなぞるというものでした。描き直しを要求されました。僕が最初に描いた絵はどうなったのでしょう。それでも僕は無垢だったために描きました。僕は当時、給食を食べる時、食器の下に青いナフキンを、布をかませてました。そのため、僕は青く塗ったのです。でも、担任はそれを理解出来ず、僕は説明も出来ず叱られました。僕は泣きながら絵を描き直しました。

 

こんなの僕の絵じゃない。

 

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こんなもの欲しくはない。

 

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理解されなかった。否定された。これが僕のはじまりかもしれません。今も続いています。

 

僕はこのトラウマの払拭のため、漫画を描かなきゃならんのかもしれません。負の感情はとても強いのです。人を破滅させます。でも僕はその負の感情を糧に漫画を描きます。

 

まな板の上の鯉がそこを脱し、滝を登り龍になれることを証明しなくてはなりません。

 

 

 

「生きている限り、バッドエンドはない。僕たちはまだまだ途中だ。」火花(又吉直樹)より